2026年8月、Xで「子どものころに受診した発達障害が、将来の障害年金に影響するのでは?」という話が話題になっています。
私自身、自閉症の息子を育てているので、
「もし息子が20歳になったとき、障害年金はどうなるんだろう?」
と気になりました。
そこで、現在の障害年金の制度について調べてみることに。
調べて分かったのは、障害年金では「初診日」がとても重要だということです。
初診日にどの年金制度に加入していたのかによって、対象となる障害年金が変わります。
また、20歳前に初診日がある場合には、「20歳前傷病による障害基礎年金」という仕組みがあります。
障害基礎年金には1級・2級、障害厚生年金には1級・2級・3級があり、制度上の違いもあります。
ただし、ここで注意したいのは、
「自閉症と診断された=将来、障害年金を受給できる」
という単純な制度ではないということ。
日本年金機構では、発達障害も障害年金の対象となる傷病の一つとして扱われています。ただし、自閉症と診断されたからといって、必ず障害年金を受給できるわけではありません。一方で、発達障害は障害年金の対象となる傷病の一つです。障害年金では、病名だけではなく、日常生活や仕事にどの程度の制限があるのかなどを踏まえて、障害の状態が判断されます。つまり、同じ「自閉症」という診断でも、実際の生活への影響や必要な支援の程度によって、障害年金の対象となるかどうかは変わります。
※実際の認定は、個々の状況をもとに行われます。
では、なぜ今この制度が話題になっているのでしょうか?
この記事では、まず障害年金の基本的な仕組みから、発達障害・自閉症の場合に何が問題になっているのか、そして「もし今、息子が20歳だったら?」というケースまで、親目線でできるだけ分かりやすく整理してみます。
Xで話題になっている障害年金制度の内容
今回、Xで話題になっているのは、子どものころに発達障害で受診した場合、その「初診日」が将来の障害年金に影響するのではないかという問題です。
Xでは、主に次のような点が指摘されています。
- 子どものころに発達障害について受診すると、初診日が20歳前になる
- 20歳前に初診日がある場合、一定の要件を満たせば「20歳前傷病による障害基礎年金」の対象になる
- 障害基礎年金は1級・2級まで
- 一方、障害厚生年金には1級・2級に加えて3級がある
- そのため、障害の状態が3級相当の場合、障害厚生年金なら対象になり得ても、障害基礎年金では対象にならないという制度上の違いがある
つまり、問題として指摘されているのは、子どものころに発達障害について受診した人と、成人して厚生年金に加入している時期に初診日がある人とでは、将来の障害年金の選択肢に違いが生じる可能性があるということです。
特に、障害厚生年金には3級があるのに対して、障害基礎年金には3級がありません。
そのため、「1級・2級には該当しないけれど、働くことや日常生活に一定の制限がある」という人にとっては、この違いが大きな意味を持つ可能性があります。
では、実際の障害年金制度はどうなっているのでしょうか?
現在の障害年金制度はどうなっている?
2026年この記事を書いている時点での制度についてまとめてみると、障害年金には、大きく分けて「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があります。
障害基礎年金

20歳前に初診日がある場合には、一定の要件を満たすことで「20歳前傷病による障害基礎年金」の対象となる場合があります。
障害厚生年金

障害厚生年金の1級・2級に該当する場合は、障害基礎年金もあわせて受給できる仕組みになっています。
障害年金で重要な「初診日」とは?
ここで出てくるのが、今回の話のキーワードでもある「初診日」です。
初診日とは、簡単にいうと、
その障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日
のことです。
「診断された日」と「初診日」は、必ずしも同じとは限りません。
そして、この初診日が、
いつだったのか
その時、どの年金制度に加入していたのか
によって、対象となる障害年金が変わってきます。
そのため、子どものころに発達障害について医療機関を受診していた場合、その「初診日」が将来の障害年金を考えるうえで重要になってくると言われているのが今回の問題点となっています。
障害年金の1級・2級・3級って、どんな違い?
障害年金には等級があります。
ここで注意したいのが、障害年金の等級と、障害者手帳の等級は別の制度だということです。
障害年金では、障害の状態によって1級・2級・3級に認定されます。
大まかなイメージとしては、
| 等級 | 障害年金でのイメージ |
|---|---|
| 1級 | 日常生活のほとんどで他人の援助が必要となる程度 |
| 2級 | 日常生活が著しく制限される程度 |
| 3級 | 労働に著しい制限がある程度 |
ただし、これはあくまでイメージです。
実際の認定では、障害の種類や症状、日常生活の状況などを踏まえて個別に判断されます。
そして、ここで今回の問題につながります。
障害基礎年金には3級がありません。
そのため、障害厚生年金なら3級に該当する可能性がある程度の障害状態でも、障害基礎年金には3級がないため、障害年金を受給できない場合があります。
障害厚生年金
→ 3級として対象となる可能性がある
障害基礎年金
→ 3級がないため、対象にならない
という制度上の違いが生じます。
厚生労働省に確認された内容を整理
今回の話題について、X上では国民民主党の議員が厚生労働省に確認した内容も公表されています。
本日、厚生労働省のご担当の皆さまにお時間をいただき、障害年金制度についてご説明いただきました。
(飛び入りで足立康史参議院議員(@adachiyasushi)、橋本幹彦衆議院議員(@Hashimoto_Mkhk)も同席しました)… pic.twitter.com/o2spXQcCzo— 牛田まゆ | 国民民主党 参議院議員(東京都) (@ushidamayu__) August 20, 2026
難しい話なので、ポイントを簡単にまとめると、
① 子どものころに発達障害で受診しても、将来必ず不利になるわけではない
子どものころに発達障害で受診していても、
「その後のうつ病なども、必ず子どものころの受診が初診日になる」というわけではありません。
成人後に発症したうつ病などについて、
- 発達障害との医学的な関係
- これまでの受診歴
- 生活や仕事の状況
などを確認して、個別に判断されます。
そのため、発達障害との因果関係がないと判断されれば、成人後のうつ病の受診日が初診日になるケースもあります。
その時点で厚生年金に加入していれば、障害厚生年金の対象となる可能性があります。
② 反対に、子どものころの受診が初診日になる場合もある
一方で、
発達障害と成人後の精神疾患に医学的な因果関係がある
と判断された場合には、子どものころの発達障害の受診日が初診日になることがあります。
その場合、20歳前の初診日であれば、障害基礎年金の対象となる場合があります。
つまり、
子どものころに受診したから必ず不利
でも、
成人後に受診したから必ず障害厚生年金
でもありません。
初診日がどこになるのかは、ケースごとに判断されます。
③ 20歳前の初診日は「不利」だけではない
ここも大切です。
20歳前に初診日がある場合、一定の要件を満たせば、保険料の納付要件を問わず障害基礎年金の対象となる場合があります。※障害の程度など、その他の要件があります
つまり、20歳前の初診日には、
「将来の障害年金で不利になる可能性」
だけではなく、
「保険料を納めることが難しかった人でも、障害基礎年金につながる可能性がある」
という側面もあります。

では、なぜ問題になっているの?
それでも問題が残ります。
例えば、
子どものころに発達障害で受診
↓
大人になって厚生年金に加入して長く働く
↓
その後、うつ病などを発症
↓
発達障害との因果関係があると判断される
↓
子どものころの受診が初診日になる
というケースです。
この場合、成人後に長く厚生年金を納めていても、障害厚生年金ではなく障害基礎年金の対象となる場合があります。
障害基礎年金には3級がありません。
そのため、

「長年、厚生年金を納めてきたのに、障害厚生年金を受けられないの?」
という不公平感につながる可能性があります。
だからといって、今の支援を無理に受けないのは違うと思う
今回この話を調べて、私自身も「初診日って、こんなに重要なんだ」と初めて知りました。
そして、子どものころの受診が将来の障害年金に関係する可能性があることを知ると、不安になる親がいるのも分かります。
でも、だからといって、
「将来の障害年金が不利になるかもしれないから、今必要な医療や療育、福祉の支援を受けない」
という選択をするのは、私は違うと思っています。
今、子どもが困っていることがあるなら、まずは今の子どもに必要な支援につながることが大切だからです。
将来、息子がどんな大人になるのか。
どんな働き方をするのか。
どの程度の支援が必要になるのか。
今の私には分かりません。
だからこそ、将来の制度を心配するあまり、今必要な支援まで手放す必要はないと思っています。
必要な支援は受ける。
そのうえで、親として将来使える制度についても少しずつ知っておく。
私は、それが今できることなのかなと思っています。
厚生労働省に確認された内容から考えたこと
今回のXでの話題をきっかけに、国民民主党の議員が厚生労働省に確認した内容も公表されています。
その中では、発達障害と成人後のうつ病などが必ず同じ傷病として扱われるわけではなく、医学的な因果関係や受診歴、生活・就労状況などを踏まえて個別具体的に判断されるとされています。
つまり、
「子どものころに発達障害で受診したら、その後は一生、障害厚生年金を受けられない」
という単純な話ではありません。
一方で、子どものころの初診日が将来の障害年金に影響し、成人後に厚生年金を長く納めてきた人が「なぜ障害厚生年金を受けられないのか」と不公平感を抱くケースがあることも分かりました。
また、20歳前に初診日があることによって、保険料の納付要件を問わず障害基礎年金の対象となり得るという、別の側面もあります。
つまり、子どものころの受診が、必ず「有利」「不利」と決まっているわけではありません。
今回の話題を通して私が感じたのは、障害年金の制度そのものがとても複雑で、必要な人に必要な情報が十分届いていないのではないかということです。
そして何より、
「将来の年金が心配だから、子どものころは病院に行かないほうがいい」
という考えが広がってしまうことは避けてほしいと思います。
必要な医療や福祉の支援につながることは、子どもの今と将来のために大切なことです。
そのうえで、親も制度を知っておく。
今回のXでの話題が、障害年金について考えるきっかけになっただけでなく、「子どものころから必要な支援を受けながら、将来の生活についても考えていくにはどうしたらいいのか」を考えるきっかけになればと思います。
私自身、まだ障害年金については詳しく分かっていません。
だからこそ、今回のような話題をきっかけに、制度について知ったことや疑問に思ったことを、これからも発信していきたいと思います。
そして、子どもたちや障害のある人、その家族が、必要な支援を受けながら安心して将来を考えられる制度に、少しずつでも改善されていってほしい。
そんな思いで、これからも障害年金について学び、発信していきたいと思います。
